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JancisRobinson

ジャンシス・ロビンソンMW

イギリス随一のワイン・ジャーナリストで、記事、著作、TVプログラムなどを通じ、世界中のワイン愛好家、プロフェッショナルに絶大な影響を及ぼしている。
主要著書に『オックスフォード・ワイン事典 Oxford Companionto Wine 』、『地図で見る図鑑 世界のワイン The World Atlas of Wine 』ほか。
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ジャンシス・ロビンソンMW 特選!今月のコラム

2008年産クロ・ド・ヴージョ 56本水平試飲 パート1 56 Clos de Vougeot 2008s Part.1

2010年7月発表
 

60種近いグラン・クリュのブルゴーニュ・ワインを一度にテイスティングするセッションなど、そう滅多にあるものではない。もっとも、どんな種類であれ60種近いブルゴーニュをロンドンのうだるような暑い日にエアコンのない上階の部屋で、となると、試飲するテイスターと試飲されるワインの両方にとって、かなりキツい要求ではある。

だが、この素敵な贈りものにけちをつけようなどとは思わない。それは今月初旬のある午後、Fine & Rare Wines社のスタッフが入念に準備して整えてくれた場であり、彼らは私たち10数名によるテイスティング用に56種類もの2008年産クロ・ド・ヴージョを開けてくれた。さらに良いことにテイスティングはブラインドだったので、我々は先入観にとらわれずにどのワインがキラリと光っているかを十分に見てとることができた。

面白かったのは、トップクラスの評価を予想された一部のワインがテイスティングの終盤においてさえ私の味覚を眩惑せずに置かなかったことだ(アンヌ・グロのワインに関する下記コメントを参照)。以下のワイン・リストは、1から57まで当日の正解表の順番に並べてある(50番目となるはずだったロベール・アルヌーのワインは残念ながら届いておらず、ニコラ・ポテルの新しいネゴシアンRoche de Belleneからのワイン52aは、ラベルにクロ・ド・ヴージョとあり、コルクにクロ・ド・ベーズとあった)。どの直後にどのワインを試飲したのか読者にわかれば合理的だろうと思ってそうしたのだが、実際のところ私は1から57まで厳密に順番通りにテイスティングした訳ではない。ワインの並びの関係上、そのテーブルが一番混んでいなかったので、私は40番台の後半あたり(正確に何番か記録しなかったのはご勘弁を)からテイスティングを開始し、57番のサンプルへと進んだ後、1からこの体系に沿ってリスタートし、当初の出発点へと至ったのである。

各ワインのスタイルや品質にはいつも通りの多様さが見られた一方、全体として印象的なワインが多かった。また、一軒の生産者のもとで他のグラン・クリュと一緒に試飲する時にありがちな感じに比べて、それらのワインから全体的に受けた印象はより好ましいものだった。室温の著しく高いテイスティング会場であったにもかかわらず(お陰で、セバスチャン・トーマス氏の膝の御開帳にまであずかった - ハワード・リプリー社のあの彼の)。

ワインの品質と、この比較的面積の広いブドウ畑(50ヘクタール/125エーカー)の中からそのワインが生まれた区画の所在地を比較できたのは、今回のテイスティングで面白く、ためになる多くの事柄の一つだった。各生産者の場所については、クロ・ド・ヴージョの生産者所在地リストを参照(以下のテイスティング・コメントと同じ順番になっている)。

Dom Gros Frères et Soeur, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 16 Drink 2015-2022

暗いクリムゾン色。やや熱を感じさせる香り。甘く神経質な感じだがピュアさは今一つ。余韻に口が渇く印象を残す樽由来のタンニン。

Dom Bouchard Père et Fils, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot  16 Drink 2013-2018

明るいクリムゾン色。かなり野性的な赤ワイン。アタックはブルゴーニュらしい甘さとスパイス。終盤に強いタンニンとアルコール感。

Dom Jean-Jacques Confuron, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 16.5 Drink 2014-2020

淡く赤いスパンコールを思わせる香り。かなりシンプル。特に大きな欠点はない。

Gérard Raphet, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 16 Drink 2014-2020

淡いルビー色。トーストの香り。とても軽い。一生懸命に造った感じ。マセレーションのやりすぎか。一番フレッシュなワインではない...

Ch de la Tour, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot  16.5 Drink 2015-2022

濃いクリムゾン色。あまり生き生きした香りではない。ブルゴーニュの赤と言うより新世界の赤か?口いっぱいに風味が広がったのち、強健なタンニンと咳止めシロップのニュアンス。相当なボリュームで、とても押しの強いワインだが、フィネスはそれほどでもない。余韻にアルコール感。

Dom Jean-Michel Guillon, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 15 Drink 2014-2020

濃いクリムゾン色。汗を思わせる、熱せられた香り。明るいチェリーの果実味があるが、ほのかさや面白さは今一つ。強健でシャープな酸。仕込みを頑張りすぎたように思える。そこまでしなくてもよかったのに。

Dom Drouhin-Laroze, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 17.5 Drink 2016-2028

中程度のクリムゾン色。甘く躍動感があり、ややパンチが効いていて粗削りだが、本物のエネルギーがあると感じる。余韻はとても美味しい。上出来!

Dom Faiveley, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 16 Drink 2014-2022

非常に淡いルビー色。砂糖漬けの熟成した香り。甘めのアタック。親しみやすいが野心的とは言えない。余韻に口が渇くようなタンニンが少々。豊かな酸味。

Ch de la Tour, Vieilles Vignes Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 16.5 Drink 2013-2022

クリムゾン色。甘いスモモ果汁の香り。その後に愛嬌のある活発な果実味。濃縮されていて、その秘めた色気はあたかも魅惑のプレイボーイを連想させる。このワインではオークが大きな役割を果たしている。しかしそれなりの魅力はある。ほんのりとプルーンの要素。

Dom de la Vougeraie, Vieilles Vignes Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 16 Drink 2013-2019

淡いルビー色。コーヒーとレッドカラントのニュアンス。甘めのアタックでややライトボディ。ちょっと気になる進み具合。

Albert Bichot, Dom du Clos Frantin Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 17.5 Drink 2015-2025

NHB(Naughty Heavy Bottle むやみやたらに重い瓶)。濃いクリムゾン色。謎めきに満ちている。ごくわずかに汗の臭いと熱っぽさ。軽く、躍動感がある。強いタンニンとシャープな酸の余韻。まぎれもなくブルゴーニュ!忠実で、見事にバランスが取れている。

Dom François Lamarche, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 18.5 Drink 2014-2026

明るいチェリーレッド。甘く豪華な香り。強烈なアピール!甘いが弱々しい感じはない。良好な酸味。リアルな輪郭と面白さ。良いワインだ!噛みごたえのある果実味。

Dom Jérôme Chezeaux, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 15 Drink 2013-2018

淡いルビー色。軽い、煮込んだような香り。フレッシュさは明らかに不在。古くなった果実。(渋味)で口が渇くような余韻。活気に乏しい。

Ch Génot-Boulanger, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 15 Drink 2015-2020

暗く紫がかったクリムゾン。甘く、まろやかな口当り。ブルゴーニュというより新世界の赤。樽香が強く、醸造家がいじくりすぎ。調和は感じられない。痛いほどシャープな酸の余韻。

Dom Georges Mugneret, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 16 Drink 2015-2022

中程度のクリムゾン色。非常に軽く、殆ど取るに足りない香り。噛めるほどのボリューム感。多くの酸味。相応に誠実だがそれほどの面白みはない。かなり頑健なアルコールの余韻。

Dom Louis Jadot, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 16 Drink 2015-2022

暗いクリムゾン色。甘くやや熱を帯びている。フレッシュさや率直さが足りない。ちょっとくすんだ感じだが、かなり高い温度で供されたことが関係しているかもしれない。少し冷やせばもっとよく見えるであろうワインの一種...

Dom Méo-Camuzet, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 17 Drink 2015-2024

暗いクリムゾン色。甘くてチャーミング。繊細で非常に整ったバランス、生き生きとしたカンゾウとスミレ。面白い、線の細いワイン。

Dom Armelle et Bernard Rion, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 16.5 Drink 2015-2022

濃いクリムゾン色。微妙でありながらボリュームのある香り。フルーティーさの後にオークっぽさ。それほどのフィネスはない。パーツの集合体というよりはパーツそのもの。とがったオークの影響。

Ch de Santenay, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 16 Drink 2014-2020

中程度のクリムゾン色。甘く、かなり開いた香り。かすかなルバーブのニュアンス。果実味のフレッシュ感には少し欠ける。生産者が真に魂を込めたというよりは決められた型通りに作ったような味。やや酸っぱさのある余韻。

Michel Nöellat et Fils, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 16 Drink 2013-2018

非常に甘くリッチな香り。並はずれた陶酔感。並はずれた滑らかさ。あまりにスムーズでかつ熟成していて気味悪い程!わずかにフレッシュさが足りない。

Dom Philippe Charlopin-Parizot, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 16.5 Drink 2013-2019

中程度のクリムゾン色。甘くわずかにポートを思わせる。アピール度は大きい。VA(揮発酸)が多く出ている!!! 危険なワイン。誘惑は多いものの、これ以上温まった状態にしたいとは思わないはず...

Dom Henri Rebourseau, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 17 Drink 2015-2022

濃いクリムゾン色。濃密で噛みごたえがあり食欲をそそるが、この温度では少し煮込んだようなニュアンスも。少し冷やして飲みたいワインの一つ。厚みのあるタンニンの余韻。

Dom Anne Gros, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 18.5 Drink 2014-2024

中程度から暗めのクリムゾン色。可愛らしく豊潤で強烈な果実の香り。甘く、リッチで、輝きのあるフルーティーさの宝庫。すごい疾走感。テイスティングの大詰め(私は終りの方から始めていた)にもかかわらずこうも眩惑させるワインには何かがある。既にとても美味しい。幾久しく。ブラボー!

Dom Guillemard-Clerc, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 15.5 Drink 2014-2020

中程度のルビー色。くすんで果実はやや古くなっている。ルバーブ。軽く、酸味が多い。ごつごつした口当たり。

Dom Michel Gros, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot  18.5 Drink 2014-2024

中程度のルビー色。おぼろげな輪郭。可愛らしく開いた香り。なまめかしいブルゴーニュ。美味しく熟した果実味。すごい高揚感。余韻に良質の酸味があるが、成育不全な感じはない。十分な実体感を伴っており、純粋さも失くしていない。

Dom Jean Grivot, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot  17 Drink 2017-2027

明るいクリムゾン色。甘くナッツめいた香り。芳香性。シナモンのニュアンス。体つきには本物の繊細さがある一方で、余韻にかなり強烈なオークのタンニンが残る。いずれ全てがうまく納まることになるのだろうか?

Dom Jean-Marc Millot, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot  15.5 Drink 2015-2022

淡いルビー色。汗くさいルバーブ、煮込んだような香りが若干。フレッシュさの欠如と奇妙な甘さ。純粋という言葉からはほど遠い。オークが支配的。

Dom Daniel Rion et Fils, Grand Cru 2008 Clos de Vougeot 16.5 Drink 2015-2023

中程度の赤色。甘く、コーヒーの香り。オークの焦げ臭か?甘めのアタックの後にややインクっぽい。万人受けするものの純粋主義者にはおそらく向かない。ウイスキー・ラクトンのニュアンスがほんの少し...


(翻訳:土田博文)

ジャンシス・ロビンソンMW
jancisrobinsonMW

イギリス随一のワイン・ジャーナリストで、記事、著作、TVプログラムなどを通じ、世界中のワイン愛好家、プロフェッショナルに絶大な影響を及ぼしている。
現代ワイン界最高の知性と評されることもしばしばで、1984年にはマスター・オブ・ワインの称号を、ジャーナリストとして初めて獲得した。
2003年には大英帝国勲章を受勲し、イギリス王室のワインセラーへの助言も行っている。史上最強のワイン百科事典『オックスフォード・ワイン事典 Oxford Companion to Wine 』の編纂(および執筆の一部)を担当し、ワインブックの決定版として知られる『地図で見る図鑑 世界のワイン The World Atlas of Wine 』についても、第五版以降を大御所ヒュー・ジョンソンと共同で執筆する(その他、著作多数)。
現在は世界中を飛び回りながら、自身のウェブサイト JancisRobinson.com に毎日記事やテイスティング・ノートを発表、英国ファイナンシャル・タイムス誌ほか多数の媒体にも先鋭な論考を寄稿している。
ジャンシス・ロビンソンは、輝かしき多様性を持つワインをこよなく愛し、そのために生きている。ワインを評価する際には、単なるボリュームよりもバランスと精妙さを重視する。

 
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